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大阪高等裁判所 平成8年(ネ)1925号 判決 1998年1月30日

呼称

控訴人(一審被告)

氏名又は名称

北爪保幸

住所又は居所

兵庫県姫路市城北本町一六番一一号

代理人弁護士

吉川武英

呼称

被控訴人(一審原告)

氏名又は名称

ソシエテ ジャ ヘネシー エ コンパニー

住所又は居所

フランス共和国 シャラント コニヤック リュー ド ラ リションヌ一番

代理人弁護士

田中克郎

代理人弁護士

宮川美津子

代理人弁護士

千葉尚路

代理人弁護士

中村勝彦

代理人弁護士

柏尾哲哉

代理人弁護士

玉井真理子

主文

一  原判決主文第二項のうち控訴人に係る部分を取り消す。

1  控訴人は、原判決別紙被告商品目録記載の各商品から原判決別紙標章目録(一)、(二)記載の各標章を抹消せよ。

2  右取消部分のうち被控訴人のその余の請求を棄却する。

二  本件控訴のうちその余の部分を棄却する。

三  訴訟費用は、第一、二審とも、控訴人の負担とする。

事実及び理由

一  当事者の申立て

1  控訴人

(一)  原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。

(二)  被控訴人の控訴人に対する請求を棄却する。

(三)  訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人の負担とする。

2  被控訴人

(一)  本件控訴を棄却する。

(二)  控訴費用は控訴人の負担とする。

二  事案の概要

原判決の「事実及び理由」欄のうち「第二 事案の概要」に記載されているとおりであるから、これを引用する(但し、原判決六丁表一行目の「被告」の次に「ら」を挿入し、七丁表末行の「しれない」を「知れない」と訂正し、九丁裏五行目の「被告ら」の次に「に」を挿入する。)。

三  当裁判所の判断

〔以下「被告北爪」を「控訴人」、原審相被告成本肇こと成耒奉を「成」という。その他の略称、略語は原判決の例による。〕

当裁判所は、被控訴人の請求は原判決別紙標章目録(一)、(二)記載の各標章を付した被告各商品の輸人、販売、頒布の差止、被告各商品からの右各標章の抹消及び商標権侵害による損害賠償を求める限度(但し、損害賠償請求については原判決主文三項掲記の限度)で理由があるものと判断する。その過程は、次のとおり付加するほか、原判決の「事実及び理由」欄のうち「第三 判断」に記載されているとおりであるから、これを引用する。

1  共同不法行為の成否について(当審における控訴人の補充主張に対する判断)

控訴人は「控訴人はおよそ成がどこからどのような方法で洋酒を輸入しようとしているのか知り得る立場になかった。被告各商品が国内に輸入された後も、控訴人はそれらを直ちに確認したわけではない。被告各商品は成によって輸入されたものであって、その所有権は成にあるから、控訴人としては成がそれらを販売することまで阻止することができない。したがって、成が被告各商品を輸入・販売したことにつき控訴人に対し共同不法行為者としての責任を問うべき合理的根拠がない。仮に控訴人が共同不法行為者としての責任を免れないとしても、その責任の範囲は被告各商品が偽造品であることを認識し得た時以降に限定されるべきである。」旨の、主張をする。そこで、右主張に鑑み、原判決の判示を以下敷衍する。

(一)  被告各商品の輸入・販売時の、成の認識

成が被告各商品を最初に輸入するに当たり、それが原告各商品の真正品でないということを知っていたとは認められないが、少なくともその販売当時においては、被告各商品が被控訴人によって海外で製造・販売された真正品であると信じていたとは認め難く、仮に右当時真正品であると信じていたとしてもそのことにつき過失があったと認められるべきであることは、原判決「事実及び理由」中の第三の一3(一九丁表)に示されているとおりである。

(二)  被告各商品の輸入・販売時の、控訴人の認識

(1) 証拠(甲第二四号証、第三四号証、第三七、三八号証)によれば、以下の事実が認められる。

控訴人は、平成三年五月二日夜、神戸連絡事務所の岸本から送られてきた被告商品(二)四〇カートン)を蒲田の倉庫で確認している。

被告商品(二)は、その時、

一本一本化粧箱に入っていない、

瓶にすり傷がある、

ラベルやロゴマークに破損があったり、ゆがんで貼られていたり、接着剤がはみ出したりしているものがある、

瓶の胴体がくぼんでしまっているものもある

という状態で 一見して非常に粗末な外装で、品質が劣悪であることをもうかがわせるようなものであった。

さらに、控訴人は、その頃、成、小嶋とともに被告商品(二)の試飲もしている。

(2) 控訴人の検察官に対する平成四年三月二六日付供述調書(甲第二三号証)には「平成三年の六月に輸入されたスリムボトルのラベルにブランデーと書かれ、輸入者がジャーディンワインズアンドスピリッツ株式会社と書かれているのを見てこれまでの分も含めて輸入したスリムボトルが偽物であると確信したものです。」との供述記載がある。

(3) そこで検討してみるに、真正品と被告各商品とを比較すると、瓶、メインラベル、バックラベル、キャプセル、メダリオンなどの外装において種々の相違点(原判決「事実及び理由」中の第三の一1(一)(1)(一〇丁裏から一二丁表まで))があり、真正品と被告各商品との間には通常人が一見しても容易に判別し得る外装の相違点が多く存在する上、いわゆる並行輸入ルートによる場合偽造品が混入される危険性があるのであるから、酒類の販売を業とする控訴人としては自らの業務上の知識及び経験に基づき、本件輸入の当初において既に被告商品(二)が真正品でないということを容易に予見し得たというべきである。そして、前項掲記の控訴人の供述に鑑み、控訴人は平成三年六月中旬以降に入荷された被告商品(一)につきそれらが偽造品であるということを知っていたものと認めるのが相当である。控訴人は、原審において、被告各商品は本物であると思っていたと供述し、乙第一四号証にも同旨の供述記載があるが、控訴人が被告各商品に存在した前記(一)に認定の瑕疵を認識していたことに微し、措信できない。

してみると、控訴人としては本件輸入当初において成に対して被告各商品の輸入・販売の中止を求めるなど被控訴人の商標権侵害回避の措置を採るべき義務を負い、これを尽くさなかったために生じた商標権侵害の結果につき過失責任を免れないというべきである。

なお、控訴人が当審において提出した証拠(乙第一三号証の1ないし5、第一四号証)は右認定を覆すに足りるものではない。

(三)  関連共同性

原判決「事実及び理由」中の第三の二(一九丁裏)の認定事実によれば、成、控訴人各自の行為が客観的に関連し共同して被控訴人の商標権を侵害し損害を生じさせたというべきである。

2  被告各商品の廃棄請求について

被控訴人は右請求をしているところ、控訴人が商標権侵害につき共同不法責任を負うことからすると、被控訴人は控訴人に対して被告各商品から原判決別紙標章目録(一)、(二)記載の各標章の抹消を求めることができると解されるが、商品自体の廃棄処分まで求める必要がないというべきである(ラベルの取り剥がし、塗り潰し、抹消等で足りると思料される。)

四  よって、訴訟費用の負担については民訴法六七条二項、六四条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小林茂雄 裁判官 小原卓雄 裁判官 ▲高▼山浩平)

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